Sunday, December 2, 2012

解はひとつとは限らないのが世の常よ

恩田陸の”ユージニア”を読んだ。
ミステリー物である。
数十年前に起きた毒殺事件を、色々な人物の観点から振り返ってみる感じで話が進む形式。
事件の真相が気になってしまい熱中して読んだ。
徐々に、事件の真相が明かされていくのだが、最後の最後まで犯人だ誰々であるという確証もなく、真実が不明のままで終わった。

名探偵江戸川コナン君ならば、”真実はいつもひとつ!”とか言って真相を解明してくれ、読者にカタルシスに導いてくれるところだが、恩田さんはそうしてくれなかった。

しかし確かに実際の事件には真相が明かされぬまま闇に葬られるケースは数多あるだろう。
第一、人間の知覚、認識力には限りがあるわけで、与えられた現状(データ)から過去の状態を100%再現できないはずだ。実際科学ではニュートンの運動方程式などの武器があっても、データには誤差はつきもの。また我々が認識していない隠れた要素もあるかもしれない。カオス的な要素がなくても、過去を100%は再現できているわけでない。Aの状態であった可能性~%、Bの状態であった可能性~%といった具合に表現するしかない。

読書中の私は毒殺事件の方程式の解が一つだけ存在し最後には求まると思って読んでいた。
しかし、著者の用意した解答は解は存在するだろうが、解の値を特定できない、であった。
真実は一つとは限らない、ということか。
数学で方程式の解が一つと決め付けている学生達は江戸川コナン君の傲慢な思い上がりに毒されているのかもしれない。ミステリーに疎い私がこの事件の絶対の解が一つだけあると思い込んでいたように。






1 comment:

  1. Clue みたい。でも真犯人は真実を知っているのだよね?それも不明?

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